1.りきとママ入院中入院中、赤ちゃんは他の病院に連れて行かれてしまって、私は一人だった。「産褥室(出産した人の部屋。赤ちゃんと同室)に移りますか?」と看護婦さんに言われたけど、断った。 看護婦さんも一応聞いておこうという感じだけで、私の気持ちをちゃんと理解してくれてるようだった。 私の部屋は4人部屋で、私の他は皆双子の赤ちゃんがお腹にいる妊婦さんだった。 お腹が張ってしまい切迫早産の危険があるので、張り止めの点滴が手放せない人。3ヶ月くらい前から入院してるという。 妊娠して糖尿病になってしまい、夜も起きてインシュリンを打ってる人。 心不全を起こし、母体が危なくなり、急遽帝王切開した人。 また、妊娠中毒症でやっぱ母体が危なくなり、帝王切開で500gの赤ちゃんを7ヶ月で出産した人。 赤ちゃんがお腹の中で育たず、私のように他の病院から転院して来た人。 大学病院なので、色々な妊婦さんがいた。 私もその一人だった・・・ 無事に生まれた赤ちゃんの泣き声が聞こえる。 出産前から、他の病院に搬送されることはわかっていたので、 そんなに嫌な気はしなかったけど、同じ部屋だったら気が狂ってただろうなあ。 「赤ちゃんって、普通に健康で生まれて、普通に育つものかと思ってました」 と看護婦さんに言ったら、 「私は色々な赤ちゃんやケースを見てるから、普通に生まれる物だとは思ってないし、自分も出産する時に何かあるかもしれないと覚悟はしてる。出産は怖いのよ」 と言われた。 なんだかなぁ・・・ 私は世の中の半分(以下)、それもいい面しか知らなかったんだなと思った。周りも自分と同じか、それ以上の境遇の人しかいない。 自分の知ってる世界は全てじゃなかった。 影で色々と悩んで苦労して、大変な思いをしてる人がたくさんいる。 自分が今までいかに恵まれてきたかと思った。 そりゃ人並みに悩み、嫌な思いをしたこともあるし、失恋だって挫折だってしたこともある。 でもそんなの小さなこと、たいしたことなかった・・・と思った。 一種のカルチャーショック。 なんていうかな、自分が立ってる地面に穴を掘って、自分の世界が広くなった感じ。 それか何かに成功して、わーい!という喜びの心境の逆って言うか・・・ (意味わかんないよね) 今となってはそういう感じだけど、その時はそんなこと思う余裕なし。 赤ちゃんが運ばれた病院には、出産した次の日から、母乳を持って面会に行った。 出産後なのでふらふらし歩けないので、車椅子を使えるところは車椅子を使った。 化粧もしてないし病人のような顔をしてたので、皆じろじろ見る。 でも体が辛いのでそんなのかまってられない。 赤ちゃんに対面した時は、ものすごくうれしかった! ガラスの箱のようなものに入れられてた。 でも普通の赤ちゃんと何かが違う・・・。何だろう何だろう。 まず顔つきが違う。 皮膚の感じも違う。肉のつき方も違う。 色も違う(青白い)。 寝てる時はまだいいのだが、起きて泣くと、顔がゆがむ。 顔面マヒ・・・・ 我が子ながら怖かった。気持ち悪かった。 受け入れられなかった。 かわいくない。 どうしよう。私はこの子を愛せないかもしれない。虐待してしまうかもしれない。 マジで思った・・・。。現実から逃げたかった。でもそんな事出来ない。 今までだったら、他のケースだったら、なんとか逃げられた。逃げる道はあった。でも今回は出来ない。絶対出来ない。 だって自分の子だもの。生きている人間だもの・・・。 夢を見ているようだった。現実を受け入れきれなくって、これは悪い夢なんだと、本気で思った。 この子はただの心臓病じゃない。 その時は顔面マヒは治るかもしれないと希望も少しあったが、その反面、直感(母の直感?)で、これは普通の心臓病じゃない、ただことじゃないと思った。 私がその事を母やパパに言うと、そんなことない、考えすぎだと言われたが、最終的には私の勘は当たった。われながら凄いなあと思う(笑) やっぱ母親が一番つながってるし、母親の勘は一番だと思う。 子供の体とは裏腹に、母体は元気で、私は予定通り退院しました。 ジャンル別一覧
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